葬儀について

目次

浄土真宗における葬儀

葬儀における荘厳や作法は、その宗旨の教えと密接な関係も持っています。親鸞聖人を宗祖と仰ぐ浄土真宗においては、すべての人が、阿弥陀如来の慈しみの世界(浄土)に摂め取られ、仏となる教えであります。これが教えの基本であります。そのため、死者を迷いの存在として、引導を渡すようなことはいたしません。また霊(迷いの存在)という言葉を用いず、清め塩や、死を忌み嫌うことからくるさまざまな迷信を排除した儀式が執行されます。。そして読経は、遺体に対してではなく、常の本尊(阿弥陀如来絵像・南無阿弥陀仏)に対して行います。総じて葬儀とは、仏徳を讃嘆し、故人を偲びつつ、報謝のまことをささげる儀式であります。

浄土真宗本願寺派 宗門葬より

宗門葬1
宗門葬2
宗門葬1

浄土真宗の臨終勤行(枕経)

人生の終わりに望んで、永年お育てにあずかったご本尊に対するお礼の勤行であります。この勤行を一般に枕経という場合がありますが、遺体に対しての読経ではありません。
本来は「臨終勤行」とあるように、息のある間に本人が聞こえる場での勤行をいいます。死後のお経となったのは、キリスト教禁制のため、江戸時代宗門改めの制度により、死者を葬るには手次寺の許可が必要となり、住職が駆けつけて検死し、弔意の上から誦経のしたのが始まりとも言われています。
臨終勤行は、お仏壇の前でお勤めしますので、仏壇の扉は開扉します。お仏壇のない場合は、ご本尊(阿弥陀如来の絵像、または南無阿弥陀仏の名号)を、礼拝できるように工夫して掛けます。

● お仏壇の荘厳

◇ お佛飯の用意が出来るなら、佛飯器に盛って仏壇に供える。故人の茶碗等に盛らない。
◇ 仏花は、赤色を避け、樒(何本でも良い)、または常緑樹にする。打敷は、白または銀色を掛ける。(白布で作ってもよく、通常の打敷を裏返して白地部分を表にして掛けてもよい)
◇ お仏壇のない場合は、ご本尊(阿弥陀如来の絵像、または南無阿弥陀仏の名号)を、礼拝できるように工夫して掛け、前卓には三具足(花瓶・香炉・ローソク立て)をおき、花瓶には樒をさします。
◇ 焼香卓を用意しお焼香の出来るようにする。

● ご遺体

◇ 遺体は、清浄にして、白布で顔を覆い、白衣や、故人愛用は浴衣や洋服など整える。その時、左前にしたり、逆さ着はしない。
◇ 遺体は、仏壇の正面を避け、北枕または西枕に安置する。部屋の都合で出来ないときはこだわる必要はない。
◇ 両手は胸元で、合掌(組み合わせる)させ、お念珠を掛ける。
◇ 納棺の折に、納棺名号(南無阿弥陀仏)を入れる。経帷子を着せたり、三角布・手甲・脚絆をつけたり、六文銭や杖を入れない。旅装束をしない。

● その他

◇ 遺体の上に守り刀を置かない。
◇ 遺体の枕元に、一膳飯や枕団子などを供えない。
◇ 掛け軸・額などに白紙を張ったり、逆さ屏風を立てたりしない。
* 生前法名を頂いてない場合は、「おかみそり」と言って、住職から「おかみそり」を  して法名を受けます。この「おかみそり」は、葬儀の前に行われる場合もあります。

QアンドA

Q なぜ、枕団子や逆さ屏風、守り刀などをしないのですか。
A 人の死に対しては、相反する二種類の感情・考え方があるようです。一つは、亡くなった者に対する追慕の情であり、もう一つは、死を忌み嫌うという考え方です。追慕の情から、「枕飯」(一膳飯)や「枕団子」などのように、食物の力で死者の魂を呼びかえそうとする風習が生まれ、死をケガレとする考え方から、「守り刀」(妖怪がとりつかないようにというが、鉄に魂を沈める力を認めていた時代の名残と思われる)や、死者の枕元に「逆さ屏風」を立てたり、仏壇や人形ケースに半紙を下げる「紙封じ」をしたり、「茶碗割り」をするのも、死のケガレが生者に移らないようにとの心づかいによる  風習です。そうした俗信を行わないのが、真宗のたしなみです。
Q 通夜・葬儀の時、なぜ「仏壇」は開けたままでよいのか。
A 死をけがれとしない。いやむしろ、死に往く私をそのまま納め取って下さる阿弥陀如来をご安置してある仏壇を開扉しておくことが原則です。また、遺体に対してお勤めするのではなく、常に本尊に向かってお勤めをします。
Q 死者になぜ旅装束をしないのですか。
A 死者の旅装束は、「冥土への旅」の装束なのでしょう。これは、中陰(中有)の思想と、中国の十王または十三仏思想を背景にしたもので、死後、浄土と地獄に振り分けられなかった者は、四十九日間、旅を続け、七日ごとに裁判が開かれる。それでも未決の者は、百日日、一周忌、三回忌と旅が続けられる。六文銭は、そのための路銀。ところが、浄土真宗は、この世で念仏申す者は、阿弥陀如来の慈しみの世界である浄土に往生し、即成仏する教えです。ですから旅装束を用いません。

浄土真宗の通夜勤行

葬儀の前夜に、近親者や友人、知人など苦楽を共にした人々が仏前に相集い、故人を追憶して、仏恩報謝の懇念を深め、法義相続する場とする。

ご本尊の全体は見え、礼拝できるようにお掛けして下さい。

◇ 棺は棺覆いまたは七條袈裟で覆い、修多羅を掛ける。(守り刀を置かず)
◇ 出席者がお焼香出来るように用意をする。
◇ お焼香は、香を摘んで頂かずに一回(本願寺派)・二回(大谷派)、香炉の火種の上に焼香します。焼香用の香炉とは別に然香用の香炉を用意する。
◇ お線香は寝かせて然香します。寝かせると消えないよう、本来の灰か、それに準じた灰を使用して下さい。
◇ 通夜・葬儀ともに木魚は使用しません。
◇ 通夜には、読経に続いて、多くの場合、法話があります。会場が大きい場合は、マイク等の配慮をお願いします。
Q なぜ線香は寝かせるのですか。
A 本来は、抹香(香を粉末にしたもの)を用いるのが正式ですが、線香はその略式のものですから、抹香を焚くように線香を寝かせて然香します。線香は、江戸時代初期(寛文七年)に、五嶋一官によって、中国の福州から伝えられたといわれていま  す。
Q 線香と焼香の使い分けは。
A 線香を燃やすことを然香といいますが、これは、仏様に常によい香りお供えするため  のものです。長い時間よい香りが漂うようにと線香を用いています。焼香は、仏様に単発でよい香りをさしあげるものです。これは火種の中に、香をくべる形式で使います。

葬場勤行

葬場において行う勤行で、仏徳を讃嘆し、故人を偲びつつ報謝のまことをささげる儀式である。

ご本尊を礼拝できるようにお掛けして下さい。

◇ 葬儀に際して、浄土真宗で使わない言葉

使わない言葉 言い替え
・ご霊前 ーご仏前・ご尊前
・祈る ー念じる。お念じ申し上げます
・冥福を祈る ー哀悼の意を表します
・戒名 ー法名
・魂 ー故人
・ご回向を頂く ーおつとめを頂く、読経を頂く
・引導をわたす ーおかみそりを行う
・安らかにお眠り下さい ー私たちをお導き下さい
・幽冥境を異にする ーみ仏の国に生まれる
 ・天国に昇天する ーお浄土に生まれる
 ・草ばのかげ ー お浄土・み仏の国
◇ 棺は、段の上ではなく、段の前か、後方、あるいは横に安置して下さい。段荘(葬儀壇)は、ご本尊へのお飾りであって、遺体へのお飾りではない。
◇ 前卓の荘厳は、五具足(香炉一個・ローソク立て一対・花瓶一対)を基本とします。花瓶には、紙華を(白または銀)、双方に四本づつ立てて下さい。
◇ お供物は、本願寺派では、餅・菓子・果物等を各一対、お供えしますが、これらの同時に供える場合は、本尊より、餅・菓子・果物の順番となります。
大谷派では、山の物(椎茸・栗)、海の物(海苔・昆布・ひじき)、里の物(高野豆腐・菓子)などをお供えします。
お茶や水・一膳飯なのは供えません。
◇ ちょうちんを用いる場合には、ご霊前と書かず、無地またはご仏前と書いて下さい。
◇ 供花は、赤色を避けて下さい。ご仏前には、毒花と刺のある花はふさわしくありません。
◇ 友引にとらわれる必要はありません。
◇ 出棺に際し、故人の茶碗を割ったり、棺の蓋を石でうったり、棺を回したりしません。
◇ 清め塩はしません。
◇ 遺族・一般焼香は、式次第中、焼香指定の場所があり、また僧侶と打ち合わせることでしょうが、一般の焼香を最初から案内する場合でも、導師の表白中は、焼香を止めて頂きたい。
◇ 導師の入退場の折、遺族も一般も、起立・着座共に、合掌して迎える作法はありません。
◇ 正面の本尊に向かって、右側が上座の席となります。従って、遺体を本尊の手前に安置するときは、頭部を右側とします。頭部を北向きという意味からも、阿弥陀如来を安置してある方向を西と取りますので、右側へ頭部を向けることは理にかなっていると思われます。但し、本尊より右側へ安置するときは、本尊に近い側が上席となるので、本尊の側へ頭部を向けます。
* 通常の葬儀は、出棺勤行と葬場勤行が一緒に勤まっています。お寺の葬儀などでは、この出棺勤行と葬場勤行を分けて行われる場合もあります。その場合、出棺勤行では、お勤めだけでお焼香はありません。
* 葬儀の折に、僧侶が浅沓(あさぐつ)といって木の沓をはいて出勤することがあります。これは、堂上では草履(皮等で出来ているため)を用いず、浅沓を用います。現  在ですと、浅沓の代わりに、布草履を用いるとよいでしょう。
Q なぜ引導を渡さないのですか。
A 元来「引導」とは、人を仏道(悟り)に導くことを意味します。それがいつしか、死者を浄土に導く儀式・作法という理解となり、浄土真宗以外の葬儀では、最も重要なものとされています。しかし浄土真宗では、引導の働きはすべて阿弥陀如来のなされ  るところであり、人が人を浄土へ導くという引導という考え方そのものがありません。ですから「御導師より引導を渡して頂きます」という司会は誤り。また「ご回向を頂  きます」のいうのも誤り。
Q なぜ戒名といわず法名というのですか。
A 戒名とは、戒律を守ることを約束した人に与えられる仏弟子としての名前です。浄土真宗では、修行や戒律を前提としないので、戒名と呼ばず法名と言います。
男女と共に「釋」(女性の場合は、釋の下に尼を用いる場合もある)を冠し、院号・法名の下に居士・大師を用いないのが本来です。(高田派のこの限りでない)
Q なぜ清め塩をしないのですか。
A 日本の古い宗教観では「死穢」(シエ)といい、死をケガレとして嫌いました。この伝統は、現在の神社神道に受け継がれています。死をケガレとするのは、死体が腐りゆくことから始まったのかも知れません。それに反し、塩は、腐敗を防ぐ作用があり  ます。そうした塩の効用から、塩が、死のケガレを清めるというマジナイの一種とてて使われだしたものでしょう。
浄土真宗では、死をケガレとせず、したがって、そのケガレを清める塩も用いません。
Q なぜ紙華を用いるのですか。
A 紙華を用いることは浄土真宗に限りません。俗に紙華ばなともいい左右一対、一瓶に  四本づつさします。色は白か銀とし、これは釈尊入滅の折、側に立つ沙羅双樹の色変じて、白鶴の如くなったという伝説にもとずく。四本づつとは「四枯四栄」の説によ  る。四枯四栄とは、四双(沙羅双樹)の幹は涅槃の四徳である常楽我浄を表し、涅槃は非枯非栄であることを表して四枯四栄という。
Q 葬儀の式次第を教えて下さい。
A 以下は、浄土真宗本願寺派及び真宗大谷派の式次第です。

還骨勤行

床の間若しくは中陰壇に安置します。

Q 中陰期間中は、ローソクや線香を絶やしてはいけないといわれますが。
A ローソクの光は、阿弥陀如来の智慧や慈悲の心をあらわし、お香は、清浄なる心をあ  らわします。灯や香の絶えることと、死者の迷いとは無関係です。これは火災の原因  ともなります。
Q 大谷本廟への分骨するのですか。
A 浄土真宗では、宗祖・親鸞聖人の墓所である、大谷本廟(京都東山五条)に、分骨したものを納めることが、門徒のたしなみとされています。
Q 中陰が三ヵ月にわたると三五日で切り上げるのでしょうか。
A 中陰の期間、つまり四十九日が三ヵ月にわたると、四十九(始終苦)が三月(身に付く)という語呂合わせからの迷信から、満中陰を三十五日で切り上げる場合があるが、  迷信を排除するのが浄土真宗の風宗なので、それは迷信であって浄土真宗では取らない事を言って上げて下さい。

浄土真宗とはどんな仏教なのか

▽宗祖はだれ

お大師様といえば弘法大師、ご開山様といえば親鸞聖人が連想されるように、浄土真宗を開いた方ということで、ご開山という言葉で親しまれている親鸞聖人を開祖とする宗旨です。聖人は、時代でいえば、鎌倉時代の方であり、浄土宗の祖とされる法然上人のお弟子でもあります。一向衆・門徒宗とも云われ

▽ご本尊は

阿弥陀如来の立像あるいは南無阿弥陀仏の名号、または、帰命尽十方無碍光如来、南無不可思議光仏です。阿弥陀如来の立像は絵像を用いることが多く、一般の阿弥陀如来の絵像は、少し横を向いた仏様が多いですが、浄土真宗では真向かいの阿弥陀如来、真っ直ぐ正面を向かれたご絵像です。

▽お経は

教典は、仏説無量寿経、仏説観無量寿経、仏説阿弥陀経で、この三つのお経を浄土三部経といいます。しかし、仏事や葬儀などでは、この三部経の他に、親鸞聖人の示された正信偈や和讃、浄土真宗の中興の祖といわれる蓮如上人のお手紙である御文章(お文)なども拝読されます。

▽浄土真宗の教えは

阿弥陀如来の本願(慈悲)を信じ、「南無阿弥陀仏」を称えて浄土に往生するという教えです。浄土真宗の教えには三つの性格があります。
一には他力本願、この言葉は一般に誤用され「人まかせ」的な使われ方がなされますが、他力のは阿弥陀如来のことであり、阿弥陀如来に願いに開かれて生きるということです。
二つには、悪人正機といわれ、悪人が阿弥陀如来の救いの対象であるというものです。この場合の悪人とは、真実に背いて生きている人のことです。悪の自覚は真実との出会いによって生まれ、悪の自覚を通して阿弥陀如来に任せきって生きるということです。
三つには、往生浄土の教えであり、生と死を包む豊かさの中で仏になっていく教えです。
また一般生活において、他の宗派と際だって異なる特徴は、日の善し悪し等の迷信をきらうことと、親鸞聖人は、肉喰妻帯(戒律を持たない)の方であったので、この宗旨では、妻を持ち、頭髪を伸ばし在家仏教の形をとっています。このことは葬儀の場面では、守り刀や清め塩などの迷信を廃することや、僧侶が頭髪を伸ばしていることに現れています。

真宗十派について

浄土真宗には主に十の宗派があります。

宗派名 所在 本山
浄土真宗本願寺派 (京都市下京区) 本願寺
真宗大谷派 (京都市下京区) 東本願寺
真宗高田派 (三重県津市) 専修寺
真宗興正派 (京都市下京区) 興正寺
真宗仏光寺派 (京都市下京区高倉) 仏光寺
真宗三門徒派 (福井市) 専照寺
真宗出雲路派 (福井県越前市) 毫摂寺
真宗山元派 (福井県鯖江市) 証誠寺
真宗誠照寺派 (福井県鯖江市) 誠照寺
真宗木辺派 (滋賀県野洲市) 錦織寺

 

各宗葬儀の意義

▽ 天台宗

導師による引導作法を基本とし、剃髪式で三帰依を授けて出家者とした上で哀悼、嘆徳の意を表する事を本旨としている。

▽ 真言宗

剃髪授戒作法、真言密教で目指す即身成仏なさしめ、仏を讃える儀式。

▽ 臨済宗

剃髪授戒し、仏者として葬儀。

▽ 曹洞宗

葬儀を出家葬法と、在家葬法に分けている。出家葬法は、尊宿喪儀法と亡喪儀法との別あり。前者は亡くなった尊宿や遺弟に対する弔意であり、後者は修行半ばにして逝った僧に対して仏法体得を祈請する。在家葬法は、剃髪授戒・仏者とさせる為の引導。

▽ 浄土宗

剃髪授戒、送仏の儀式。

▽ 時宗

浄土宗に同じ。剃髪授戒、引導。

▽ 日蓮宗

授戒や血脈などない。日蓮宗の「霊山往詣」が、法華経の信者である事を条件としているから。

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